【読んだ感想】砂川文次「小隊」(文庫版)

【読んだ感想】砂川文次「小隊」(文庫版)

今回は砂川文次氏の「小隊」(文庫版)について読んだ感想を書いていきます。

文庫版は中短編が3話収録されています。

本の題となっている「小隊」「戦場のレビタリヤン」「市街戦」

それぞれが自衛隊及び民間軍事会社についての本です。

始めに言っておくと、この本については軍事及び自衛隊の知識がある程度必要となっています。

小説中に軍事における専門用語や略語が頻繁に登場しますが、それらについての解説は全くありません。

自分も軍事マニアと呼べるほどではありませんが、学生時代国際政治学を学び、軍事に関する本も何冊か読んでいたつもりです。

それでも不明な点が多かったので、なおさら軍事知識のない人にとっては一読しただけではチンプンカンプンになってしまうと思います。

よって、この本を読む際には知らない単語が出てくるたびにネットで調べながら読み進めていくのがいいのではないでしょうか。

それでは「小隊」「戦場のレビタリヤン」「市街戦」の3つの中短編の順番通りに感想を書いていきたいと思います。

「小隊」についての感想

本の題になっている中編です。

簡単にあらすじを書くと現代日本、北海道。標津町に上陸したロシア軍の侵攻を向かい撃つべく釧路町の国道272号線沿いに陣地を構える。

前哨基地陣地を任された陸上自衛隊釧路駐屯地所属の若き小隊長を主人公とし、道東を打通せんとするロシア軍の尖兵と相対する…というストーリーです。

北海道に上陸したロシア軍と自衛隊が戦う…というストーリーは小林源文氏の仮想戦記「バトルオーバー北海道」を彷彿とさせます。

また、ロシア軍と地上戦を行うというシチュエーションは2022年6月現在継続中のウクライナ侵攻とも通ずるものがあります。

「バトルオーバー北海道」と「小隊」のストーリー上の違いは、「バトルオーバー北海道」が戦況を幅広く描写したのに対し、「小隊」は釧路町の一つの小さな前哨基地陣地を担当となった小隊長の話という比較して小さな話になっています。
(ちなみに作者の砂川氏も小林源文のファンらしいので、「小隊」を書くにあたって下敷にしているのは間違いないでしょう)

さらに、戦場は釧路町の「上別保ふれあいセンター」から釧路別保ICの南ぐらいまでの半径1km以内の話です。

戦術レベルでなく小隊規模の話であるからこそ、私のような一般人にもスケール感が伝わりやすく臨場感が増します。

さて、「小隊」はそのリアリティにおいて他の仮想戦記ものを圧倒しているように感じます。

それは作者が元自衛官であることが大いに関係しているでしょう。

インターネットによれば、作者の砂川氏は元陸上自衛官で対戦車ヘリAH-1Sコブラの操縦士でもありました。

作中で戦場における葛藤等ももちろん描写されますが、小隊長としての役目を果たすため砲弾を撃ち込まれる混沌・混乱のなか、状況を遂行しようとするシーンがメインです。

次々に出てくる専門用語、略語などで混乱することも多いでしょう。

少なくとも軍事について関心や知識がない方が読んでも意味不明でしょうし、読んでいて楽しいものではないと思います。

本の傍らにスマホを置いてつっかえた部分を調べていく読み方をおすすめします。

「戦場のレビタリヤン」についての感想

小説ではあまり場所が重要視されていないものの、イラク北部のクルド人自治区の話だと思います。

時代設定は現代。主人公は幹部自衛官を数年で辞め、実家でブラブラしていた若者。

退屈な日常から抜け出したく民間軍事会社のコントラクターに志願。クルド人自治区にある石油プラントに派遣されそこで防衛任務にあたる…というもの。

この本を10ページぐらい読み進めていてピンと来ました。

これは、「戦場の掟」を下敷きにしているということ。

「戦場の掟」は退役米軍人であった青年がイラクの民間軍事会社に勤め、死亡するという2008年のノンフィクションです。

「戦場のレビタリヤン」は「戦場の絆」を基に、時代設定を現代に、主人公を元幹部自衛官の日本人に換骨堕胎したものであると感じました。

敵が大規模に攻めてくるものでもないし、ドラスティックな展開があるわけでもありません。

とにかく何もない砂漠の中でいつ来るかわからない敵を待つ感覚、そして主人公が常に感じる退屈感がにおい立ってくるという印象を抱きました。

この中短編を読むならば、先述した「戦場の掟」も併せて読んでおくべきでしょう。

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市街戦

砂川氏の新人賞受賞作の短編。

一般大学を卒業し、国家2種公務員として陸上自衛隊に入隊した主人公。

幹部候補生学校での最後として、数日間にわたる行軍訓練を行うというもの。

水分を制限され40キロ以上の荷物を持ち歩き続けるなか、大学時代の幻想が入り混じっていくというもの。

現実(行軍訓練)と幻想(学生時代)が入り混じってだんだんとその輪郭があいまいになっていく。文章力は新人離れしていると思いました。

これを20代中盤で書いているというのには驚きです。

この話には軍事的な用語はほとんど出てこないため、ミリタリーに全く詳しくない人であってもとっつきやすいと思いました。

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