どうしたら若い消防団員が増えるのか?ゆとり世代の班長が思うこと
消防団6年目、班長の杉浦かおる(@munenmusou_blog)と申します。
消防団員のなり手不足が全国で深刻化しています。
幸いなことに、自分の所属する団は人数が充足しているうえ、20代から30代が団員のほとんどです。
しかしながら、我々のような人員に恵まれた団は全国的に見ても珍しいと思います。
かつて消防団はなりたくてもなれなかった時代もあったと聞きますが、現在は頼んでも人が集まらない状況。
これは時代や社会情勢の変化が影響しているのは間違いありません。
今回は「ゆとり世代」たる現役消防団員の私が、「どうしたら若い消防団員が増えるのか?」について提言できたらと思います。
「操法」の簡素化
消防団最大のガン、操法大会。
これを解体・簡素化しなければ消防団に未来はないと思います。
一般人が消防団参加を毛嫌いする要因は「操法」「飲み会」「女遊び」でしょう。
平成生まれにその三点は訴求点どころか積極的に避ける要因になります。
「消火訓練」は必要だと思う
もっとも、消火訓練は必要だと思います。
実際に火災現場での消火活動において操法の知識は役立ちました。
自分が体育会系ということもあるかもしれませんが、反復練習によって動作を身体に叩き込むことも必要です。
このことから、自分は「消火訓練」自体はこれからも推し進めていくべきでしょう。
「操法」に固執せず大規模災害に対しての訓練も行うべき
しかし、操法のあり方については抜本的な改革が必要でしょう。
操法大会の存在は少なくとも1970年代から続いており、そのやり方は50年近くにわたってほとんど変わっていないようです。
1970年代と言えば巨人大鵬卵焼きの高度経済成長期です。
その頃のやり方を現在に適用しようとしても当然うまくいかないでしょう。
操法のいけないところとしては「型稽古になっている」「操法のための操法になっている」「長期間の練習」の3点。
消防団は火災だけでなく洪水・台風・地震などの様々な災害において出動します。
操法に偏重した訓練でなく災害時の捜索・救助訓練など大規模災害を想定した訓練を増やしていくべきでしょう。
礼典の廃止
地域によって差はあると思いますが、消防団は強制的に出席することが求められる礼典が多いです。
「入退団式」「観閲式」「年末夜警」「出初式」などなど(名称の揺らぎはあると思います)
これらの礼典をまとめて行い、内容もすべて簡素化すべきでしょう。
消防団員は別に仕事を持っている人が参加するものですから、不必要な行事は縮小すべきかと思います。
年に1回、「入退団式」があれば十分。
表彰等もそこでまとめてやればいいと思います。
団員の研修強化による対応力の向上
少子高齢化の日本において、消防団員の大幅な増加は人口動態的にも不可能でしょう。
それならば、それぞれの消防団員の質の向上に努めるべきです。
階級・年次に基づいたキャリア教育
消防団に入って驚いたのは、研修がほとんどないところ。
昨年代理で幹部研修に行ったことを除けば、平団員での研修は救命救急講習と入団直後に消防署で受けた基礎的な説明にとどまっています。
基本的に分団の中で先輩方から教えてもらうOJT教育がほとんどです。
民間企業の新人教育のようにOFFJTをもっと導入すべきでしょう。
1年目・2年目など段階に併せて消防学校や消防署での数日間の研修など、座学や実践を通じた平団員から階級・年次に応じて能力底上げができるといいのではないかと思います。
消防学校等による座学研修の強化
代理で受けた幹部研修は非常に有意義なものでした。
座学研修は消防団だけでなく自分の人生にとっても糧となる内容の研修でした。
防災にかかわる座学による研修だけでなく、ハラスメント講習などを強化し消防団のコンプライアンス意識の向上が消防団の国民の信頼につながるのではないかと思います。
資格取得の援助
中型・大型自動車免許取得支援
私より年下世代は免許区分の変更により、消防車の運転ができないことが問題となっており、消防車の買い替えや準中型免許の助成が行われています。
地域によっては水上バイクの免許取得助成も行われているとか。
これを全国的に制度化するといいだろうと思います。
「防災士」の取得
一応消防団において分団長以上の階級を取得すると防災士の資格をほぼ無試験で習得できます。
ただ、研修を受けて防災士を習得した消防団OBの知り合い曰く、「消防団数年やってれば防災士の資格に足りるだろう」とのこと。
数年目の団員を相手にして防災士を習得させる研修を開くのも一考かと思います。
独自の国家資格の制定など
防災士はあくまでも民間資格。
このため、転職等においてそこまで価値のあるものではありません。
ここで、消防団員だけが習得できる国家資格などを制定してみるのも一案かもしれません。
BCPなど民間企業でも防災の知識が求められるなか、消防団員としての知見を活かした活動ができるよう支援がなされると、消防団員にとってもメリットがあるはずです。
退団時期の明確化
田舎の消防団にありがちなのが、下の世代が入ってこないからいつまでも団員を続けているというパターン。
山間部の町村地域では20年選手もザラと聞きます。
消防団員は5年勤めると退職金の支給対象となるため、5年を一区切りにして希望者が退団する、やりたい人は残るといった運用を明確化すべきでしょう。
20年やるのは私であっても御免こうむりたいですが、5年間ならばまあいいかと思う人も多いはず。
もちろん、この運用をする場合、5年退団者に対する非難が一切ないようにしなければならないのは言う間でもありません。
「OB団員」の活用
大規模災害時に限って地元において消防団に交じって活動する「OB団員」の制度化も考えるべきです。
現在、私の参加している分団においても台風などにおいてOBから援助の申し出があります。
しかしながら、非分団員たるOBのケガや、他者の物品を傷つけた場合において「消防団員等公務災害補償制度」などの適用外となってしまうため助力を断らざるを得ません。
OBで大規模災害に限って活動するのであれば無禄であっても地域のために活動したい方はたくさんいます。
旧軍における「予備役」、自衛隊における「予備自衛官」のような形OB団員による活動を認める制度的余地があるのではないでしょうか?
総評:団員の負担軽減が最優先
若い世代であっても地域に貢献したいという感情は、年齢の高い世代と比べて劣るものではないと思います。
一方で、消防団の活動はその気持ちを挫くのに十分な活動に際して負荷が掛かります。
消防団によって自分の生活が脅かされる可能性があるというのは消防団に入団しない大きな理由になるでしょう。
若い消防団員を増やすならば、団員の負担軽減をしなければなりません。
コンプライアンス意識の向上、正しい会計処理、操法大会の廃止・縮小などなど課題は山積していますが、この点監督官庁である消防庁による大規模な改革が求められるところです。
少なくとも消防団に入っている人で「消防団を廃止すべき」と訴える人はほとんどいないのではないかと確信しています。
やり方・運用方法などはこれからも検討し続けていかないといけませんが、消防団という組織はこれからも必要です。
若い世代が入ってくれる持続可能な組織としての消防団としてのあり方をこれからも考えていかなければいけません。